O-SHI-NA-MO-NO

いただきもの、自分たちで選んだもの、そんな"お品物"たちを記録しています。

「ふつう」じゃない/手拭い

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狸模様の手拭い。

定年退職するSSDさんの送別会。宴もたけなわ、同じ部署の14人が順番にそれぞれの思い出や感謝の気持ちを述べていく。ある多忙な時期を苦労して乗り越えた後、SSDさんから「よくやってくれた」と労いの言葉を掛けられた当時の新入社員は「人生でこんなにケンカした人はいない」と言いながら惜別の涙が止まらなかった。

「私は前フリだから」とよくわからない前フリをしたオオトリの部長以外は、皆素敵な挨拶だった。とは言え、言葉は良くないがここまではよくあるふつうの送別会の風景だった。

最後にSSDさんからのご挨拶。するとSSDさんはおもむろに鞄の中から折り畳まれた紙を取り出した。誰もが(挨拶文を考えて来たんだ!)と思った。SSDさんはごく簡単な挨拶をすると「もうすぐ卒業ということで、卒業にちなんだ歌を、アカペラで歌います」と言った。中度の盛り上がりと軽度のざわめきが起こり、数名がスマホで動画を撮り始めた。

「いーつのーことーだかー 思い出してごーらんー あんなーこーとー こんなーこーとー あーったーでしょー♪」

1番が終わって軽く拍手が起こったもののSSDさんのアカペラは2番へ突入。手拍子も一緒に歌う人も現れないまま2番まで歌ったSSDさんは「どうもありがとうございました」と言って挨拶を終えた。約40年の仕事遍歴を語ることもなく、後進の者共へ激励の言葉を贈ることもなく、紙を畳んで座った。

あとで調べてみると、この歌は幼稚園の卒園式で歌われているらしい。そして歌詞を見て驚いた。SSDさんは2番をさりげなく替え歌にしていたのだ!結びの一節はこう替えられていた。

「もーうすーぐみんなとーさようーならー♪」

こんなに記憶に残る送別会は今まで無かったかもしれない。狸の手拭いは、そんなSSDさんからいただいた。

ありがとうございました!